「第15回 団地再生シンポジウム」の取材に行ってきました
  「サステナブルなまちづくり」をテーマにした第15回団地再生シンポジウムが12月17日、Kosha33ホールを会場に開かれ、取材してきました。 
 主催は、(一社)団地再生支援協会と神奈川県住宅供給公社。関心の高さを示し、当日会場は大勢の人でいっぱいに。4時間におよぶ長丁場でしたが、同時に団地再生(=まちの再生について)よいお話のたっぷりと聞けたシンポジウムでした。
 サステナビリティ(持続可能性)という言葉はよく企業経営などに使われてきました。企業は利益追求だけでなく、信頼性や安全性を重視しつつ企業の社会的責任を果たしていくことが、結果としてサステナブルな企業経営につながると言ったことでしょうか。
  今回のシンポジウムでは、まちづくり、さらに社会全体にもこのサテナビリティが重要視されていることを知りました。現在さまざまなまちで空洞化、少子高齢化、空き店舗などの問題が生じていますが、いずれも深刻で解決するのはなかなか難しい状況でます。 
 最初の講演者である筑波大学の谷口守教授は、都市を生き物にたとえて説明しました。
  「『生き物』と『都市』は実はよく似ている」と谷口教授。
成長し、活動する状態を維持しようとし、新陳代謝もします。けれど、病気やケガもするし、老化し、成人病もあり。そして「老化」もします。 
 たとえば、人口が減っているのに、郊外に人口が広がり、空き家が増えて、まるで骨粗鬆症のようにすかすかになっている、ほか、今の日本のまちは、税人病だらけのようです。今、よく団地の少子高齢化が問題になりますが、問題なのは団地だけではなく、日本全体のものと捉える必要があるそうです。
   K.クンツマン ドルトムント大学名誉教授は、ドイツにおける都市開発やまちづくりの基本、サステナブルなまちづくりなどについて詳しく説明しました。
 ドイツでは今、40%が独居世代と言います。その中で、家族が高齢者の面倒を見る伝統は消えつつある、とのことです。これはわが国にも言えることで、先進国共通の課題と言えるでしょう。
 また大切なのは、10%の高所得者のためでなくすべての市民の生活の質の向上を図ること。WHOのチェックリストなどを参考に意識を高めることが大切だとのこと。
 例えば、健康に注意が向くようにするなど、地域の住人を対象にするパイロット・プロジェクト、地域特有の条件を探るなどにより、ヘルシーシティーを目指していくことがより重要であると話しました。
  また、神奈川県住宅供給公社の猪股篤雄理事長は、「夢の団地―その続き―」と題して講演。
少子高齢化、核家族化、人口減少が及ぼす影響などについて話しました。
   高度経済成長期に建てられ、かつて夢の住まいとも言われた団地が、少子高齢化の波とともに役割を終えようとし、またその影響として空き家率の増加が見られると言います。現在、神奈川県の空き家数は49万戸、空き家率は11.2%、これはある意味、住宅供給の終わりをも意味するかもしれないとのことです。 
 ほかにも食糧自給率の低下、介護費の増大、インフラの老朽化など日本は現立ち向かうべき案件の多い過渡期にいるようです。
持続可能な社会へ移行する中で、これからの住まいとして、生涯賃貸もありえるのでは、と猪股理事長は提案しています。 
 また、子育て支援、高齢化、空き店舗対策など、同公社が手がけた団地でのさまざまな取り組みについても説明しました。
 講演終了後には、総括討議が行われ活発に意見が交わされました。
 
 団地再生というと、とかく高齢化、人口減少、空き店舗など個々の問題に特化して考えがちですが、もっと大きな視点でもって、社会全体がサステナブルなまちづくりについて取り組むべき時期にきているのかもしれません。
そんなことに気づかされるシンポジウムでした。 
                                         (根本)
0コメント