神奈川県住宅供給公社 初の1棟丸ごとリノベーションを担当した 上田憲治さん

写真は、上田さん(神奈川県住宅供給公社 賃貸事業部 設計監理課) 


神奈川県住宅供給公社の「アンレーベ横浜星川」がこのほど、第 30 回 BELCA 賞を受賞しました。受賞内容は、BELCA賞表彰建築物“ベストリフォーム部門”。
「アンレーベ横浜星川」は、60年以上前(1954年)に竣工された「桜ヶ丘共同住宅」を 、2019 年に 1 棟丸ごとリノベーションしたもので、建物の長寿命化や商品価値の向上を図るための取り組み。

まず温熱環境の改善、中性化進行、結露の抑制などのための外断熱改修、そして排水竪管を屋外に置いてメンテナンス性の向上と間取りの自由度を図り配管の周囲をルーバーで囲うことで、従来の「団地」のイメージを一新する画期的な外装デザインになりました。内外装すべての工事を全戸居ながらにして実現されたことも、高く評価されています。

 *今回、設計から工事まですべて関わった、神奈川県住宅供給公社の上田憲治さんにお話を聞きました。

    

    

ーーリノベーション後の外観を見た際には、おしゃれな新築マンションのようで、とても築60年以上には見えませんでした。すごいですね。上田さんはずっと設計を担当してるのですか?

 上田「この事業の当初から担当しました。今回の工事は、お住まいの方が全戸居ながらで工事することを前提としてスタートしていること、また、リノベーションだけでなく、躯体を残した全面的な改修工事を計画することから、設計に約2年間費やしています」


 ーー上田さんの生まれるずっと前からの建物をリノベーションするということで、特に感慨のようなものはありましたか。

 上田「工事が終わり足場が撤去され新たな外観を目にしたとき、工事中に築60年以上経過した建物の劣化具合を見続けてきたこともあり、これまで経験したことのない達成感がありました。この、アンレーベ横浜星川で実践した取り組みが、“BELCA賞”という名誉ある賞を受賞することができて嬉しく思います。」


 ーー1棟、丸ごとリノベーションするのは公社初の試みと伺いました。1棟丸ごとリノベーションとはどのような内容でしょうか?

 上田「アンレーベ横浜星川の1棟丸ごとリノベーションでは、以下の4つを柱とした工事にチャレンジしました。
 ① 建物寿命90年を目指した【外断熱】② 間取りや外観デザインを一新した【リノベーション】③ 将来のメンテナス性の向上・間取りの自由度を実現させた【排水竪管の屋外化】④ 棟内移転で全戸を【居ながら工事】などです」


 ー入居者の皆さんは、全戸居ながらのリフォームだったとか。苦情などなかったのでしょうか?

 上田「共用部・専有部の多くの工程を効率的かつ合理的に実施していくことの重要性を設計時から設計・施工者で共有意識をもって進めてきました。
 工事中はお住まいの方とのコミュニケーションも非常に重要であると認識し、お住まいの方の不安を極力少なくするために、工事情報を細かく提供してきました」


 ーー内装も素敵ですね。床も木の香りに癒やされるようでした。こだわった点などありますか?

 上田「県内小田原産の杉無垢材t25をフローリング材に使用しています。賃貸物件で、材質が柔らかい杉無垢材を使用するのは珍しいと思いますが、市販のフローリングにはない温かみや自然の風合いが想像以上に良くとても気に入っています。

 また、当公社では、所有する資産の利活用を通じてSDGsと親和性の高い取り組みを行っていて、輸送に係るCO2発生の抑制や地域の山林の健全化、また、地産地消による地域経済の活性化も意識しています」


 ーーアンレーベという名前の由来を教えてください。
 

 上田「戦後昭和の高度経済成長期に産業の発展とともに多く建設され、かつて「夢の団地」と言われていた団地の利活用を目指した事業において、「夢」をキーワードにフランス語の夢「REVE(レーヴ)」に不定冠詞「UN(アン)」を付けた造語です」


 ーー上田さんがこれから挑戦したいお仕事などありますか?


 上田「今回の事業は、試行実施で様々な取り組みにチャレンジしました。これからも新しいことにチャレンジしていきたいと思います」


 *ありがとうございました。これからますますのご活躍を期待しています。

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